場所は、パーティー会場の大ホール。

 関連業者への挨拶回りがひと段落して、つかの間、少しだけ料理を口にできる時間があった。

 会場の片隅で、課長と二人、

「あ、これ、美味しいですよ、課長」

「ん、どれどれ?」

 みたいな、たあいのない会話をしていたと思う。

 色気のいの字もありはしない。

 でも、絵面だけ見たら密会する恋人同士に見えなくもない。

 ちなみに、画面の右端には、お酒の入ったグラスを片手に持った飯島さんの、右半身が見切れて写っている。

 実に楽しげで、口から覗く白い歯がキラリとまぶしい。

――なんかもう、驚かなくなってきたぞ。

 驚くよりもむしろ、あきらめの境地に突入してしまった私は、淡々と、次の写真をめくり視線を落とす。

 場所は、ホテルロイヤルの展望レストラン。

 飯島さんのお誘いで、飯島さんと課長と私の三人で、二次会をした時のものだ。

 適度に明かりが落とされた店内。

 階下に、美しい夜景を望む展望レストランの窓辺には、顔を寄せ合い、一見仲睦まじげに密会する男女――に、見えるかも? な、でもその実は、飯島さんがトイレに立った隙に、

「課長、私、持ち合わせ二万しかないんですけど、ここってけっこう高そうですよね……」

「金のことは心配するな。ちゃんと狸親父から預かっているから」

「ああ、そうなんですか。それならよかったぁ」

などと、貧乏性丸出しのヒソヒソ会話をしていた、正に、その瞬間を捉えたものだった。