二枚目は、一枚目から数時間後。
夜が明けたアパートから出てくる、少し疲れたような表情の課長の姿がばっちりとおさめられていた。
――あああ、これは、誰が見ても、アレだわ。
紛れもなく、アレだわ。
驚きを凌駕する脱力感に言語中枢も脱力して、うまい表現が浮かばない。
「いや、なんか、すまないな……」
「いえ。こちらこそ……」
課長と二人、チラリと視線を合わせて乾いた笑いを浮かべる。
課長は、悪くない。
悪いのは、飲みすぎて、こんな面白おかしい状況を作り上げてしまった、私だ。
何の因果か、思い出したくもない過去の過ちをご丁寧にフルカラー画像で見せつけられて、はぁぁっ――と、一つ、大きな溜息をつく。
おそらく、この後もこの手の写真が続くに違いない。
意を決して次の写真をめくってみれば、またもや続く、面白おかしいスキャンダルねつ造写真。
場所は、とある高級ブティック。
カウンターで支払いをする課長の隣には、真新しい高級ドレスを身にまとった、私の姿。
題して、『上司に高級ブティックで高級ドレスを買わせる部下の図』。
「これは、清栄建設のパーティーの時のですか」
「だな」
なるほど、そう来たか。
そして、次。
エレベーター内で撮られた写真には、顔を寄せ合って楽しげに談笑する一組のカップル――、に見えなくもない、課長と私の姿。
この時は確か、『変な所があったら教えてください、会社の恥にはなりたくないですから』的なことを私が耳打ちしたんだ。
あの時、課長は、なんて答えたんだっけ?
確か、『人間の本質は、なかなか変わらない』とかなんとか。あの時の課長の表情が、微妙だったから印象に残っている。
――って、あれ?
この写真、なんか、変だ。
なんだろう?――
何が、変なのかは分からない。
でも、ざわざわと『何か』が神経を逆なでする。
走る違和感に、じいっと写真を凝視するけど、その正体が何なのかは見えてこない。
まあいいかと、考えるのをやめて、次の写真に視線を落とす。