それにしても、『グループ傘下企業』って、なんのことだろう?
私たちが勤めている太陽工業は、地方都市の一企業だ。
清栄建設を始め、建設業界大手の会社と取引があるのは確かだけど、どこかの大企業の傘下に入ってるなんて話は、聞いたことがない。
あくまで、独立した一企業。
それとも、課長が、太陽工業に来る前にいた会社のこと?
詳しくは聞いてないけど、谷田部課長は建築関係の会社から社長自ら引き抜いてきた有望株だってふれこみだった。
建築関係の最大手って言ったら……。
――ピピピピピ。
考えに沈んでいた私は、鳴り響いたコーヒーメーカーのドリップ終了のアラーム音に、ドキリと現実に引き戻された。
それを合図のように、課長と探偵さんの打ち合わせも終息に向かったようだ。
「風間、ガードの件だが、くれぐれも頼むぞ」
「ご心配なく。直接何かを仕掛けてくるほど愚かではないでしょうが、君も充分気を付けてくださいよ。昨夜のように、所在が確認できないのは、困りますからね」
「……わかった。引き続き調査を頼む」
「へっぽこ探偵に、お任せあれ」
どうやら、五分間の密談は、少しばかりタイム・オーバーして終わったらしい。