「まあ、少し設計をかじったくらいだけどね」

「えっ!? 設計って、……まさか建築士の資格、持ってたりするんですか?」

「ああ、ちょっと必要に迫られて一級建築士を取った――というか、会社で取らされたんだ。ペーパー建築士だけどね。でも、こういう設計図から加工図をおこすと言うのは、正真正銘初めてだよ。けっこう、面白いものだね」

 うひゃー。これは、真面目にビックリだ。

 大手ゼネコンの監督なんかでも、持っているのはほとんど『二級建築士』の免許止まり。

『一級建築士』っていったら、設計士の先生よ。

 はっきり言って、鉄骨の加工図書くのに必要な資格じゃない。
 
 っていうか、思いっきり宝の持ち腐れじゃない。

 なんで、この人、この会社に来たんだろう?

 と、気持ちよく紙の上を滑っていくシャープペンの芯と、それを操る長い指先に見ほれていたら、不意に視線が合って思わず呼吸停止。

「と、ここの収まりもこれで良いのかな?」

 ん?

 と、伺うような瞳に見詰められて、またドキドキと鼓動が跳ね回る。

「え、あ、はいっ! バッチリOKですっ」

 ああ誰か。

 このイカレタ脳みそを、何とかしてください……。