「味気ない部屋だろう?」
まるで心を読んだみたいに、部屋の入り口で呆然と立ち尽くしている私に、課長の苦笑交じりの声が飛んできた。
「え……、そんなことないですよ? 私の部屋なんかと違って広くて素敵だなぁって」
心情を図星されて、思わず挙動不審になってしまう。
そんな私の様子を見た課長は、愉快そうに口の端を上げた。
「味気ないなぁって、顔に書いてあるよ?」
「ないですよ!」
否定しつつ、思わず手のひらで顔を撫でて確認してしまう。
「書いてあっただろう?」
「ありません!」
なんですか、そのエスパーみたいな観察眼は?
逃げるように、ちらりと腕時計に視線を走らせれば、時は既に午前十一時十五分。
やばい、病院にいくんだった。
これ以上時間をくったら、午前中の受付時間に間に合わなくなる。
「課長。私をからかって遊んでないで、保険証探してくださいね!」
「了解、了解」
クスクスと笑いながら、課長が壁際のリビングボードの方へ歩み寄ったときだった。
プルル、プルル――と、リビングボードの上の白い電話機が、着信音を上げた。