遅い朝食をとり、と言ってもまだ三十八度代の熱があるためか、さすがに食欲がない様子の課長はコーンスープを少し口にしただけだった。

 とにかく食事の次は病院だ。病院へ行くためにはまず課長のアパートへ、保険証を取りに行かなければならない。

 住所を聞いてみると意外にご近所さんで、課長のアパートは家から車で二十分ほど。

 さらに、かかりつけだという中央病院へは、課長のアパートから車で三十分ほどだ。

 保険証を取りに寄る時間を含めて考えても、一時間もあれば病院へたどり着ける。

 愛用の軽自動車は昨夜から会社へ置きっぱなしになっているので、私が課長の車を運転して向かうことにした。

 どうにか、午前中の病院の診療時間には間に合うはず――。との私の算段は、しょっぱなから崩れ始めた。

「あの、課長……。本当に、ここでいいん……ですか?」

 第一の目的地である課長のアパートを眼前に捉えた私は、慣れない車の運転席でかなり緊張しながらハンドルを握りつつ軽くブレーキを踏んで車を減速させると、隣の助手席へだるそうに収まっている上司様に、おそるおそるお伺いをたてた。

 目の前にそびえ立つ立派な建物は、どうみても個人が住むようなアパートやマンションの類ではありえない。

「ああ、ここで間違いない。その先左側から地下駐車場に入れるから」」

「あ、はい……」

 間違いないって、これ、いわゆるホテルってヤツですよね?

 それも、全国チェーン展開の有名高級ホテル。