目には目を。

 不意打ちには、不意打ちを。

 キスの最中に、相手から思いっきり息を吹き込まれたら結果は明白。

「うっ! ごほっ! げほげほっ! げほっ!」

 苦しげにむせくりかえりながらも、抱え込んだ私の身体を放さないのは、根性というかなんというか。

「っ……げほっ……なに、するんだ?」

 人を抱き枕代わりにして、恨みがましそうに至近距離で愚痴を言わないで欲しい。

 絆されてしまいそうになるじゃないの。

「それはこっちのセリフです、課長。病人のくせに何するんですか? 大人しくしていないと、治りませんよ?」

 どこかに脱走中らしい理性を取り戻して欲しいと切に願いつつ『課長』の部分に力を込める。

 ドキドキ暴れまわる心臓をなだめすかしながら、どうにか冷静に言えたと思うけれど、耐久時間に自信はない。

 ここは、さっさと開放してもらわなければ、心臓が持たない。

『はい、じゃあ、放してください』と、密着したままの体にどうにか割り込ませた両腕に力を込めるが、一向に開放してくれる気配はなく。

「病人、だから」

 代わりに、クスクスと楽しげな囁きが耳元に落とされ、そのくすぐったい感覚に思わず身をすくめる。

「……ひゃっ!?」

 み、耳元攻撃は、反則だって!