無事トイレを済ませた美加ちゃんの手を借り課長を布団の中に寝かしつけ、コンビニに走って氷を買い付け、課長の頭を冷やして体温を測ってみれば、上がりにあがった三十九度六分。

「……すごい熱ですねぇ」

「うん。すごい熱だねぇ……」

 大人でこの高体温は、かなり辛いはず。

 美加ちゃんと二人、静かに眠る課長の枕元で、体温計のデジタル表示を見つめながら頭をつき合わせてため息を吐く。

 咳が出るとか鼻水が出るとか、私の知る限り本日の課長に風邪と思われる症状はなかった。

 静かにいきなり熱が上がったこの症状を見れば、素人ながらなんとなく病名の予想がついてしまう。

「インフルエンザとかですかねぇ……」

「……そうかもねぇ」

 予想通りの病名を口にする美加ちゃんに、私は力の無い相槌を打つ。

『先刻の課長のご乱心は、高熱のためだった』のだと原因は分ったものの、更に困った事態に陥った。

 この状態では、明日、と言っても後数時間後のことだけど、課長はまず会社は休むようだろう。

 本当にインフルエンザなら、しばらくは休むようになってしまう。

 まあ、その心配はさておいて、とにかく朝を待って病院に直行だ。

 どんな病気にしても、医師の診断が必要なことには変わりない。

「とにかく感染るといけないから、美加ちゃんは寝室に戻って少しでも寝ておいて」え? 先輩は……」

 と小首を傾げてから、美加ちゃんは合点がいったようにニッコリと頷く。

 どうしたって課長の看病は必要だし、色々な事を割り引いても怪我人の美加ちゃんに負担は掛けられない。

 それは建前で、本音を言えば私が看病したいのだ。