「美加ちゃん、もうそろそろ寝ようか? 明日も会社があるし、美加ちゃんも少しは寝ないとケガに触るよ?」

「えー、まだ眠くないですー」

「でも、寝るの!」

「ぶうぶうー」

 豚の鳴きまねをしながら口を尖らせる美加ちゃんに手を貸して立たせると、隣の寝室へと連れて行く。

 さすがに酔いが回ったのか、千鳥足の美加ちゃんをどうにかベッドに座らせ、布団をめくってトントンと叩く。

「ほら、ここね。美加ちゃんはベッドを使って。私は布団を敷いて、隣の床に寝るから」

「はぁい。わっかりましたぁ……」

 右腕を庇いながらコテンと横になった瞬間、さすがに眠気が襲ってきたのか、すぐにスースーと気持ちの良さそうな寝息が聞こえてくる。

 お酒でほんのり上気したその顔を見つめながら、本当に無事で良かったと心底思った。

「おやすみ、美加ちゃん」

 そっと寝顔に声をかけて明かりを消し、寝室から隣のDKに足を向ける。

 さて、残るはもう一人。

 鼓動が早く感じるのは、きっと回り始めたお酒のせい。

 今日は美加ちゃんもいるし、私がドキドキするようなことは何も起こらない。

 そう自分に言い聞かせながら、課長の待つDKへと足を踏み入れた。