どうやら、課長も『私の部屋』で一緒に夕飯を取るらしい。

 ついでに、おつまみとお酒持参で酒盛りもしちゃうらしい。

 あまりと言えばあまりの事の成り行きに脳細胞が付いて行かず、包丁を持った腕だけが律儀に『食材を切り刻む』と言う慣れ親しんだ動作を繰り返す。

 そうだった。

 美加ちゃんは、この手の事には俄然張り切る『しきりたガール』だった。

「あーずさ先輩っ」

 黙々と料理を進めていく私の左隣に、美加ちゃんは、ニコニコ笑顔で顔を覗かせる。

「……何?」

「そんな怖い顔で、怒らないで下さいよぉ」

「怒ってないよ」

「だって、眉間に縦ジワよってますよ?」

 ギク、ギクッ。

「……」

 うう。だから、飯島さんにも「考えていることがモロに顔に出る」なんて言われるんだわ……。

 課長の鉄面皮、少し分けて欲しい。

「いいじゃないですか、今日くらい。傷心の後輩のために、楽しく酒盛りしましょうよ!」

 ええ、ええ。分かっていますとも。

 ここまで段取り組まれちゃ、今更課長を追い返す事なんかできないし。

 この知能犯めっ!

 チラリと軽く睨みを聞かしたら、美加ちゃんは悪びれもせずに『エヘヘ』と肩をすくませた。