「はい。三十分ですね」

――何が、三十分?

 胸騒ぎを覚えつつノロノロと、言葉の意味に考えを巡らせた。

「あ、ついでに、せっかくだから三人で酒盛りしましょうよ。ビールとおつまみの買い出し、お願いしますね」

 さ、酒盛りっ!?

 どこで、誰が、酒盛りっ!?

 脳内漂白モードで、酸欠の金魚よろしく、口をパクパクと開け閉めする私のことなどお構いなしに、事は着々と進んでいく。

「はい、お待ちしてまーす」

 プチリ。

 美加ちゃんは通話ボタンを切ると、にこやかな笑顔で「はい」とスマートフォンを私に差し出した。

「と言うことで、課長の分も雑炊、お願いしますね先輩!」

「……」

 私は無言でそれを受け取り、くるりと踵を返してキッチンに向かうと鍋に水を張り火にかけ、材料を切り分けにかかる。

 ええ、もちろん三人分。

 夕飯は会社でオムライスを食べているけど、色々あって、さすがに私もお腹が空いたから一緒に食べちゃおう……。