「はい。もう平気です。はい、そうですか」

 美加ちゃんと課長の会話を聞くともなしに聞きつつ、遅すぎる夕飯の支度をしようとエプロンを付けながらキッチンに足を向ける。

 やっぱりメニューは、手早く簡単に作れて美味しい雑炊みたいなのが良いかな?

 確か、冷凍したごはんと鶏肉があったから、シメジとシイタケ、後は冷凍食品のゴボウ&人参ミックスを入れて。

 あ、元気が出るように、根ショウガをすって入れてみよう。仕上げは卵を落として半熟に。

 うんイケそう。問題は――。

「美加ちゃん、鶏肉とキノコの雑炊にしようと思うんだけど――」

 食べられる?

 と、振り向きながら何気なく聞こうとして電話中だったことに気づき、ハッと口を押えた。

 美加ちゃんは電話口を手で押さえて、

「はい、鶏肉もキノコ類も大好きですー。メニューは鶏肉とキノコの雑炊ですね?」と、聞き返してきた。

「あり合わせだから正式なメニュー名は無いけど、まあそんな所ね」

 美加ちゃんはニッコリと頷き、再びスマートフォンを耳に当てて口を開いた。

「と言うことで、課長も、梓先輩特製の鶏肉とキノコの雑炊を食べに来てくださいね!」

――はい?

 今、何を言ったんだ、この()

『と言うことで』、課長が、なんですって?

 妙なセリフを聞いた気がして動きを止めたまま、楽しげな表情で電話を続けている美加ちゃんの顔を、まじまじと注視する。