「何、それっ……?」
呻くように吐き出した掠れた私の声が、ガランとした人気のないコンビニの駐車場の闇の中に吸い込まれていく。
――いっぺん、 頭、かち割って、覗いてやろうか、あのヒヒジジイっ!
許せない。
許せる、わけがない。
毎日遅くまで仕事をして図面を書き上げ、一刻も早くその完成図を届けようとした美加ちゃんの仕事に対する誇りを一生懸命さを、土足で踏みにじったあの下衆野郎。
こんなケガをするまで追いつめて、こんなに怯えさせて、何が自意識過剰だっ!
「でも、このケガのおかげで逃げられたから、良かったですぅ……」
怒り心頭に発して無言で空を睨んでいた私は、心底ホッとしたような美加ちゃんの呟きに、ハッと現実に引き戻された。
本当に、そうだ。
不幸中の幸い。
血を見て怖気づくタイプのヘタレ親父で、助かった。
もしも逃げられなかったら――。
最悪の場合を想像して、恐怖と怒りで頭がくらくらする。
体の傷はいつか治るけれど、心に刻まれた傷はなかなか治るものじゃない。
とにもかくにも、この程度ですんだのは不幸中の幸いだったのだ。
「もう、心配しないでいいよ。後は私と課長に任せて。美加ちゃんは、ゆっくり休んでね。あ、今日は、家に泊まりにおいでよ。ね?」
「はい……。ありがとう、ございますぅっ……」
安心して気が緩んだのか、美加ちゃんは再びポロポロと涙をあふれさせた。