「ちょっ……、何するんですかっ!?」
捕らわれた手は、どんなに引っ張ってもびくともせず。
「きゃっ!?」
更に強い力で腕を引かれた美加ちゃんはバランスを崩し、ソファーに崩れるように倒れ込んでしまった。めくれ上がったスカートの下の太腿があらわになり、慌てて裾を整えるも尚も腕は掴まれたままで。
「……放して、くれませんか?」
どうにか虚勢を張り、のしかかるような体制で落とされる社長の見開かれた目を、美加ちゃんは力を込めて睨み付けた。
いつもニコニコと愛想が良い美加ちゃんの強気の反応が予想外だったのか、社長の顔に浮かんだのは、無様なほどの動揺の色。でも――。
「な、何を言っているんだい? 私は、何も……」
そう言い繕い体を起こしながらも、しっかりと掴んだ手は放そうとしない。
こうなれば、最後の手段しかない。
「放して下さい。じゃないと、ここから警察を呼びますよ?」
そう、抑揚のない低い声で言い放ち、胸ポケットから愛用のスマートフォンを取り出し通話ボタンを押した美加ちゃんのその行動は、皮肉なことに逆効果で、悪い方に作用した。
『社会的に抹殺される可能性』を感じたのだろう、外れかけていた理性の最後の枷は、きれいに弾き飛ばされて、社長を更なるエスカレートした行動へと駆り立ててしまった。