小学生の頃から、他の子よりも体の発育が良かった美加ちゃんは、今までの人生の中でこの目と同じものを、嫌と言うくらいの数見てきた。

 色欲を発散するような血走ったいやらしい光を放つその眼は、学生時代の通学電車の中や通学路で、今まで何度となく、見知らぬ異性から自分に向けられたものと同質のもの。

 中には、視姦だけでは飽き足らず手を伸ばして来る変態もいた。

 ま、まさか、この人が――。

 ただの勘違い。

 そうよ、思い過ごしよ。

 そう必死に自分に言い聞かせても、本能が危険だと告げている。

 確かに、ペラペラと自分の強さを並べたてながら、じりじりと距離を詰めてくる目の前の人物は、いつも自分が見知っている物静かな大木社長とは明らかに違う。

 信じられない思いに混乱する中、美加ちゃんはどうにか理性で自分を保ち、「それでは、宜しくお願いいたします」と言い置き、一刻も早くそこを立ち去ろうと踵を返した、その時。

「佐藤さんっ!」 

 不意に、左手首を強い力で掴まれて身を強張らせた。

 いつの間にか、すぐ側まで近付いてきた社長のガッチリとした大きな手に自分の手首が掴まれていることを理解した美加ちゃんは、ハッとして抗った。