――なんだ。

 やっぱり、そういうことか。

 一瞬、ヤキモチでも焼いてくれたのかと思って、ドキドキしてしまった。

「はい。分かりました」

 そして落ちる沈黙。

 再び図面台に向かい、黙々とシャーペンを走らせるも、落ちたままの沈黙が痛い。

 もしかして、課長、怒っていたりするのだろうか?

 そんな気がして、図面台の陰から隣で自分の図面台に向かっている課長の表情を伺い見る。

 もちろん作図している間もニコニコスマイルを浮かべている訳ではないけど、やはり、その表情はいつもよりも不機嫌に見えた。

――や、やっぱり、怒っている?

 私、何か、怒らせるようなこと、やっただろうか?

 思い当たるのは、食後の会話くらいだけど……。

 うー、やだなぁ、この雰囲気。

 そんな居たたまれない沈黙に包まれたまま数時間が過ぎ、時計は既に午後九時半。

 私と課長以外の社員はみな退社してしまい、落ちた沈黙はますます深くなる。

 その沈黙を破ったのは、私のスマートフォンから鳴り響く電話の着信音だった。

 仕事中はマナーモードにしてあるため、ブルル、ブルルと、振動をするスマートフォンを制服のベストのポケットから取り出し、着信窓に視線を走らせる。

 そこに表示されているのは、『佐藤美加』の文字。