「本当、慣れない道だから、気を付けてね。私は十時くらいまでは残業しているから、何か図面の説明で分からないことがあったら、すぐに電話してね」

 私が声をかけると、美加ちゃんはニコリと破顔した。

「了解しましたー。ばっちり安全運転で行ってきますね!」

 若いと言うのは素晴らしい。

 この時間になっても、元気いっぱいエネルギッシュな美加ちゃんのパワーにあやかり、私も、もうひと頑張りしよう。

 なんて自分に喝を入れていたら、美加ちゃんがスッと顔を近づけてボソッと耳打ちしてきた。

「先輩。今夜は、残業する人少ないですからね。頑張って下さいねっ」

「はいはい。頑張って柱詳細図を仕上げますよ」

 美加ちゃんが何を頑張れと言っているのか分かっているけど、敢えて知らないふりでピントのずれた返事をしつつ、ウンウンと相槌を打つ。

「だーかーらー。そうじゃなくって」

「分かった分かった。ほら、約束の時間に間に合わなくなっちゃうよ。あ、でも、慌てないで行くのよ」

「分かりましたー」

 少し頬を膨らましながらしぶしぶ頷くと、なんだかんだと言っても仕事熱心な美加ちゃんは、今日最後のお仕事へと向かって行った。