確かに鉄骨建築の図面書きなんて、堅いことこの上ない。

 変なところで笑いのツボを刺激されて、思わずへらっと笑ってしまった。

 でも、美加ちゃんは表情を崩すことなく、尚も真剣な面持ちで淡々と言葉を紡いでいく。

「あたしがいつも先輩と課長のことをはやし立てていたのは、先輩も課長も、お互いに想いあっていることが分かったからです。好きな者同士が惹かれあって愛しあって何がいけない、ってのがあたしの持論ですから」

 ふう、と一つため息を吐き、美加ちゃんは言葉を続ける。

「先輩を見てるともどかしいんです、あたし。仕事だってバリバリできて、ちゃんとメイクすればすごく綺麗なのに。最初から自分には無理だってあきらめてしまってる。でもそれじゃ、何も始まりませんよ?」

 最初からあきらめている。そう。その通りだ。

 でも私は、自分が最善だと思う道を進んでいるだけだから、他にどうしようもない……。

「そう……だね」

「このままじゃ、恋も運もみんな逃げだしちゃいますよ。知ってます? チャンスって言うのは、前髪が長くて後ろ髪が禿げ上がっているんですって」

 後ろ髪が禿げ上がっている、チャンス?

 キョトンと見つめていたら、美加ちゃんはふっと目元を和らげて口の端をあげた。

「だから、チャンスが来たと思ったら迷わずすかさず、長い前髪をガッチリ掴んで自分に引き寄せるんです」

 そのビジョンがリアルに思い浮かんで、思わずクスリと笑い声が漏れた。