もちろん、いくら一番の古株とはいえ、工務課全員のお仕事情報を把握している訳じゃない。
美加ちゃんは私が新人教育した子だから、自然と気になって見ているから覚えているだけ。
「全部じゃないけど、まあ、美加ちゃんの工事は覚えているわね。で、その二回がどうしたの?」
人見知りをしない美加ちゃんと、『一見』人当たりが良い飯島さん。打ち解けて、プライベートな話をしたとも考えられる。もっとも、それなら飯島さんの興味は美加ちゃんに行きそうなものだけど。
なんでまた私なのだろう?
何度となく、ループしては、そこで思考が止まる。
『あなたはきっと、自分の良さを分かっていないんですよ』
飯島さんは、ああ言ってくれたけど、どんなに考えてもやっぱり分からない。
「飯島さん、あたしと初めて会ったとき、なんて挨拶したと思います?」
「え? えーと、初めまして?」
でしょう、一般的には。
「そう、初めまして。そこまでは良いんですけど、その後ですよ問題は」
『高橋さんは、お元気ですか? 今は、どちらの現場に? 彼女の仕事ぶりは見事ですよね。ちなみに、今、彼氏とか、居たりしませんよね?』と、あの邪気のない好青年スマイルで質問攻撃をしたのだとか。
「あたしも、あんなに分かりやすい人、初めてでしたよ。でも、何度も先輩と組んで仕事をしているのに、良くも今まで黙っていましたよねー。押しが強そうに見えて、意外とヘタレくんなのね」
「あ、あははは……」
たしかに、変に押しは強い。