「へぇ、飯島さん、とうとう告っちゃったんですかぁ。それにしても、課長と先輩の関係を、一目見ただけですぐに見抜くなんて、大ざっぱな朴念仁に見えて意外と鋭い奴だったんですねぇ、あの色黒のお人」と、しきりに感心していた。
とうとう?
その言葉の意外さに驚いて、まじまじと相変わらず素敵に可愛らしいその顔に見入ってしまう。
もしかして。
「……美加ちゃん。飯島さんの気持ちを、その、知っていたり……するの?」
「はい、ばっちり知ってますよー」
美加ちゃんは事もなげにニコニコと、一見天使のような、その実少し人の悪い『小悪魔スマイル』を浮かべた。
――な、なんで、当の本人の私が知らないことを、美加ちゃんが知っているの?
いくら『社内恋愛情報通の美加ちゃん』でも、取引会社の現場監督さんの片恋情報まで網羅できるとは思えない。
メイク技術ばかりか、読心術もマスターしているんじゃないでしょうね、この娘(こ)。
声もなくポカンと間抜けに口をあけて驚愕の眼で見つめていたら、美加ちゃんはペロリと舌を出して種明かしをしてくれた。
「ほら、あたしも何度か飯島さんの担当工事をしたじゃないですか?」
「うん。二回……くらいだっけ?」
「おお、さすが梓先輩! 後輩の工事の担当監督まで把握してるー」
ヤンヤヤンヤと手を叩く真似をする美加ちゃんの様子に、苦笑してみせる。