自販機コーナーには四人掛けの白い丸テーブルセットが並べられていて、そこで飲食できるようになっている。

 喫煙ブースもすぐ脇に併設されているので、社員の息抜きスポットになっていた。

 私たちのように朝のコーヒーを楽しむ社員もいるようだけど、さすがに今の時間帯には誰もいない。

 紙カップ入りのコーヒーを各々買った私と課長は、ガランとした自販機コーナーの一番奥の窓際に、向かい合って腰を下ろした。

――のは良いものの、やっぱり、かなり気まずい。

 まともに視線を合わせたら赤面しそうで顔が上げられない。

 猫舌をこれ幸いと、まだ熱々のコーヒーに口を付けることをせずに、カップを手のひらの中で弄びながら上がる湯気に視線を落として疑問を質問に変えた。
 
「あの、私に、渡したいものって、なんですか?」

「ああ」

 視界の隅で課長は頷くと胸ポケットから折りたたまれた白い紙を取り出して、「君に、だそうだ」と、その紙を私の方に差し出した。

 何? 何かの書類、にしては、厚ぼったい紙だ。

 カップをテーブルに置き、紙を手に取り広げて落とした視線が固まった。

 B5ほどの大きさの白い紙の真ん中に、顔が描いてある。

 クレヨンの淡く優しいタッチで描かれているのは、髪を首の後ろで束ねたメガネをかけた女性の顔。その表情は、ニコニコと満面の笑みに彩られていた。

 これが誰なのか誰の手によって描かれたものなのか、聞くまでもない。

 だって、一生懸命書いたことが伺われるたどたどしいひらがなで、『たかはしさんへ。あそんでくれて、ありがとう。またあそぼうね! まりより』と書いてある。

 心の中に広がったのは、ホンワカとした温かいもの。

 あの時、遊園地で繋いだ可愛らしい手のぬくもりや天使のような笑顔が胸をよぎり、思わず笑みがこぼれた。