自分で言うのも気が引けるけど、顔は十人並。
卑下するわけじゃなく冷静に判断しても、決して美人の部類ではない。
スタイルにしても『痩せている』と言えば聞こえは良いけど、お世辞にも男性に好まれるようなメリハリのある体つきではない。
性格に至っては、不器用の一言につきる。
要領の悪さと融通のきかなさと言ったら、自分でもたまに眩暈を覚えるほどの折り紙つきだ。
『現場での私の姿を見て一目惚れ』だそうだけど、何か大きな誤解と曲解の賜物なんじゃないかという気がしてならない。
いや、そうに違いない。
リアルな私の生態を知れば、飯島さんだって目が覚めるに違いない。
ひたすら自分のマイナス要素を脳内列挙して思わず眉根にしわが寄った私を見つめながら、飯島さんは尚も愉快そうにクスクスと笑う。
「あなたはね、きっと自分の良さを分かっていないんですよ」
私の良さ? そんなものがあるのだろうか?
取り柄と言えば年を食ってることくらい……ってこれも欠点か。
ううっ。分からない。
情けないけど、まったくもって分からない。
ますます渋面に拍車がかかる私に、飯島さんはニコニコとのたまった。
「まあそれも、おいおい教えてあげますよ。じっくりとね」
「……」
いや、教えてほしくはありません。
どうか、放っておいて下さい。
そんな切なる願いは言葉にはできず。
なんだか大変な人に見込まれてしまった事をようやく悟った私は、今更ながら『ガマの油』よろしく、たらーりたらーりと冷や汗をかいていた。