「六年間待ったんです、今更慌てたりしません。じっくり長期戦で行かせてもらいますから」
――へ?
「それに、あなたが誰を好きだろうと俺は諦めませんから、そのつもりでいて下さい」
――はい?
漂白中でまだ機能回復に至らない脳細胞は、疑問符だけを連発する。
そんな状態でも、ただこれだけは理解していた。
飯島さんはやはり、基本は『良い人』だ。
でも、見た目通りに『優しいだけの人』ではない、と。
「一つ……、聞いてもいいですか?」
自失を幾分脱し、ようやく回復したばかりの言語中枢を酷使して、どうにか質問を口にする。
「なんなりと、どうぞ」
「私のどこが、そんなにお気に召したんですか?」
正直、不思議でならない。
飯島さんは背も高いし外見だって格好良い。
性格も、多少いじめっ子傾向があるけど良い方だと思う。
勤め先だって日本を代表する大手ゼネコンで、この若さで現場主任を任されるほどの有望株でもある。
付き合いたいと寄ってくる女性は、いくらでもいそうな気がする。なのに何故、よりによって私なのだろう?