呆然と見つめる私を、さらに呆気にとられるような彼の言葉が、これでもかと追い打ちをかける。
「俺はね、たぶんあなたが思っているような男じゃないですよ。暴露しちゃうと、谷田部さん親子が今日、ここに来ることを知っていて梓さんを連れてきた――って言ったら、軽蔑します?」
課長が来るのを知っていて……って、わざと鉢合わせするように仕組んだってこと?
でも、どうして、課長たちがここに来るなんて知っていたの?
疑問は、すぐに飯島さん本人が種明かししてくれた。
「実は昨日の二次会の時、あなたがトイレに立っている間に谷田部さんからその話が出たんです。『明日家族サービスで遊園地に行くけど天気がいいと助かる』ってね。まさかその時は俺自身も、今日こうして二人で観覧者に乗って告白合戦をする羽目になるなんて、予想外だったけど」
「じゃあ、私が課長に思いを寄せていることを知った上で鉢合わせするように仕組んだ……って言うんですか?」
「正解!」
ニコニコ邪気のない笑顔が悪魔のそれに見えてきて、脳内が漂白される。
「嘘……」
ああ、飯島さんの『好青年』のイメージが音を立てて崩れていく。
優しい、良い人だと思ったのに。
そう信じていたのに。
もしかして私の人を見る目って、節穴だらけなの?
ガーン、ガーンと、目に見えない何かが私の後頭部を殴打する。
「だから、梓さんが俺の告白を、心の負担に感じることはないんですよ」
――え?
果てしなく落ち込んで俯いていたら意外なほど優しい声が聞こえてきて、驚いた私は反射的に顔を上げた。
そして再び絡み合う視線に、我知らず鼓動が早くなる。