頂上に差し掛かった観覧者は、微かに揺れながら音もなく下降していく。
自分の卑小さを再認識させられて羞恥心に身悶えながら、一刻も早くここから逃げ出したい衝動に駆られている私には、その下降スピードがやけに鈍く感じられた。
沈黙が、痛い。
やっぱりここは、謝っておこう。
そう思い、足元に張り付いている視線を引っ剥がして、相変わらず真っ直ぐに向けられている飯島さんの瞳を見据え視線が合ったその刹那、飯島さんは、耐えきれないようにプッと噴き出した。
「飯島……さん?」
自分の何が彼の笑いのツボを刺激したのか想像がつかず、私はキョトンと目を丸める。
「今、もの凄く恥ずかしいって思っていたでしょう?」
「えっ!?」
心でも読まれたかとギョッとする私の様子を見て、飯島さんは、さも愉快そうにクスクスと笑いながら言葉を続けた。
「梓さんってばか正直に顔にでるから、ついつい苛めたくないなるんですよ」
「ええっ!?」
苛めたくなる!?
ニッと口の端を上げるその表情に覗くのは、イタズラを企むガキ大将のような、少し意地悪な色。