ゆっくりとでも確実に、地上は遠のき星の瞬き始めた夜空が視界を埋めていく。

 四人掛けの観覧者に飯島さんと向かい合って座った私は、窓の向こうに見えるどこか物悲しく感じる夜の闇に包まれた景色から目の前に座る人に視線を移し、静かに口を開いた。

「飯島さん。実は私、ずっと、好きな人がいるんです」

 伝えたいことはただ一つ。

 今更どんな綺麗な言葉を並べ立てても、それは変えようがない。だから、私はズバリと核心のみを伝えた。

 真剣な眼差しで私の言葉に耳を傾けていた飯島さんは、フッと苦笑を浮かべ淡々と言葉を紡いだ。

「そんなこと、始めから知っていましたよ。俺がいったい何年、あなたを見てきたと思うんですか?」

 何年って、初めて現場で顔を合わせたのは、確か三年前――。

「三年前ではないですよ?」

「……え? だって」

「確かに、俺が清栄建設に入社してあなたと初めて仕事をしたのは、三年前です。でも、俺があなたを初めて見たのは、六年前。藤堂とうどうビル建築工事の時なんですよ」

『たぶん、あなたは覚えていないと思いますけどね』

 そう前置きして、飯島さんは、私に初めて会った時のことを淡々と語ってくれた。