楽しい時間は、あっという間に過ぎて。
一時間ほどして課長から私のスマートフォンに連絡が入り、私たち三人は仲良く手をつなぎ、出会った軽食スタンドのテーブルまで戻った。
「あれ? お連れの方は?」
戻ってみれば、そこにあったのは一人ポツリと佇む課長の姿だけ。例の婚約者候補嬢の姿はなく、不思議に思った私は思わずそう聞いてしまった。
「彼女は、先に帰ったよ」
端的にそれだけをボソリと言って、課長は苦笑した。
「え? 帰ったって、一緒に来たんじゃないんですか?」
何処に住んでいるにしても、ここは公共の交通機関の便がもの凄く悪いから車じゃないと帰れないはず。でも、その疑問は、課長の言葉でスッキリと解消された。
「用事があるとかで、ハイヤーで帰ったよ」
うわ。どこまで帰ったんだか知らないけど、遊園地からハイヤーでご帰宅ですか。なんだかやっぱり、世界が違う気がする……。
と、少し僻ひがみ根性交じりで考えていたら、課長がスッと頭を下げた。
「ありがとうございました。おかげで助かりました」
「あ、いいえ、私も、真理ちゃんと遊べて楽しかったですから!」
空いている右手をぶんぶんと振りつつチラリと飯島さんの表情を伺い見たら、ニコニコ笑顔で「ええ、俺も楽しかったですよ」と言ってくれたので、ホッとした。
飯島さんが、子供好きな人で助かった。