針のむしろのこの状況を一刻も早く抜け出したい。

 その切なる願いは、可愛いエンジェルちゃんの一言で、儚くも砕け散った。

「パパ、真理もここで高橋さんと一緒に、ハンバーガー食べたい!」

 はい?

 他人の食べているものを見ると、つい食べたくなる。子供ならなおさらだろう。

 だけど、どうしてよりによって、『私と一緒』なんだ?

 課長、ここは、父親の威厳ってヤツでエンジェルちゃんを説き伏せて、この場をすぐさま立ち去って下さいっ!

 心の中でそう叫ぶ私の気持ちを察してくれたのか、課長自身もそれはさすがに気まずいと思ったのか、ニコニコと、課長の手を引っ張って天使の笑顔でねだる娘のお願いに、少し困ったように眉根を寄せた。

「真理は、さっきレストランで食べただろう? それに、高橋さんはデート中なんだ。邪魔したら悪いだろう?」

 デ、デート!?

 確かに、傍目にはそう見えるだろうけど、デート……。

 ガーン、と後頭部を殴り飛ばされたようなショックに、かろうじて耐え笑顔を浮かべた。

「俺達は、別にかまわないですよ。ねえ、梓さん」

「えっ!?」

 梓さん!?

 いきなりの飯島さんの名前呼び攻撃に脳内漂白するも、ハッと我に返り、なんとか言葉をひねり出す。

「あ、はい、良かったら、どうぞ」

 私と飯島さんの言葉に『我が意を得たり!』とばかりに、真理ちゃんは、ちょこんと私の隣に腰を下ろした。