――あれ?
脳裏をよぎる既視感にドキンと鼓動が跳ね、ゆっくりと視線を巡らせる。
私から見れば前方。
食事スペースの脇の煉瓦敷きの通路を元気に歩いてくる小さな人影に、さらに深まる既視感。
女の子だ。パステルピンクのワンピースに赤いサイドポーチを肩から斜にかけた、とても可愛らしい女の子が、私の方に近づいてくる。
好奇心と希望に満ちあふれた黒目がちの大きな瞳と、ほんのりと上気したプクリと丸みを帯びた頬。
彼女が動くたびにツインテールの髪がひょこひょこと上下して、その白い頬をサラサラと撫でる様はまるで子ウサギのようだ。
少女の面差しは『ある人』を思い起こさせ、私の鼓動はますます大きく跳ね回った。
まさか。
そんな偶然、あるわけがない。
他人の空似よ。他人の空似。
ほら、子供って、みんなよく似ているもの。
「高橋さん? どうかしましたか?」
「あ、いいえ、なんでもないで――」
不安を払拭するように呟いたその言葉は、最後まで発することができなかった。なぜなら。
「あれ、お姉さん。パパのカイシャのドウリョウの高橋さん?」
私のテーブルの前で足を止めた少女が、ニッコリと邪気の無いエンジェル・スマイルでそう声をかけてきたからだ。
キュッと下がる目じり。
小首を傾げる様は、まさに天使。