相変わらずまっすぐ向けられる視線は、声と同じように穏やかで優しい。

「笑ってくれて、よかったと思って」

「え?」

 その言葉の意味が分からず小首をかしげていると、飯島さんは鼻の頭をポリポリと書きながら私の疑問に答えてくれた。

「今朝電話を掛けたとき、高橋さんの声がものすごく沈んでいるような気がしたんです。ああ、何か嫌なことでもあったのかな? って。で、実際コンビニの駐車場で会ってみれば、泣きはらしたような目をしているし、ああ、これは何かあったなって」

 それで少しでも笑ってほしくて断られるのを覚悟で強引にデートに誘ったのだと、そう言って飯島さんは笑った。

『何があったのか?』とは問わない彼の優しさが、ありがたいと思った。

『明るく陽気で仕事ができる大手ゼネコンの現場監督さん』

 この人は、思った通りの人だ。

 ううん、それ以上に、人の痛みを察することのできる優しい人。

 正直に言って、私はこの人が好きだ。もちろん、『LOVE』ではなく『LIKE』。情愛ではなく、友愛。

 だからこそ、伝えなくてはいけないことがある。

 今が、それを伝えるときだ。

 ぎゅっと膝の上で両手を握りしめ、私は意を決して口を開いた。

「あの、飯島さん……」

「はい?」

「昨日のお話しなんですけど――」

 本当は、昨日の二次会で告白されたときに、きちんと答えなければいけなかった自分の気持ちを伝えるべく、言葉を続けようとしたその時。

 ピョコピョコと視界の端に何か見覚えのあるものが動くのが見えて、続く言葉を飲み込んだ。