怖かったけど、なんだろうこの感覚。

「あれは、けっこう癖くせになるんですよ」

 ビッグ・サイズのコーラのカップを口に運び、ゴクゴクと美味しそうに飲みながら、飯島さんは笑う。

 そうか、『怖いけど、又乗りたい』。

 そう感じるこの感覚を『癖になる』と言うのか。

「そうですねー」

「じゃ、食べ終わったら、もう一回チャレンジしてみますか?」

 少し意地悪そうにニヤリと口の端を上げる飯島さんに、ブルブルと頭を振る。

「食べた後に乗ったら悲惨なことになりそうだから、遠慮しておきます」

「それは、残念。高橋さんと二人で、またあの目くるめく感動を味わいたかったのに」

「あ、あははは……」

 確かにある意味、『目くるめく感動』には違いない。

 飯島さんと、遊園地。

 意外と言えば意外だけど、似合っていると言えば似合っているかもしれないこの組み合わせ。

 始めこそぎこちなくてギクシャクしていた私も、飯島さんの飾らない底抜けの明るさに引っ張られて、いつの間にか、このひと時ときを楽しんでいた。

 明るくて行動的で、楽しくて。

 こういう人を、ネアカって言うのだろう。今まで、私の周りにはいなかったタイプの男性だ。

 少し強引だけど、嫌味がないから、その強引な行動も思わず笑って許せてしまうようなところがある。

 この人は、きっと男女の別なく友人が多いのじゃないだろうか。

 学生時代に比べれば、社会に出て揉まれた分いくらか対人関係に進歩の跡が見られる程度の私からすれば、美加ちゃんとはまた違う意味で、羨ましい存在ではある。

「でも、よかった」

「はい?」

 脳内で飯島さん分析に勤しんでいた私は、今までとは違う穏やかなトーンの声に引き寄せられて、彼の顔に視線を走らせた。