刻一刻と、『その時』が近づいていた。

 暴れ出した鼓動と共に高まっていく初めての感覚に、全身がピリピリと張りつめていく。

 力を込めて握りしめた手のひらから伝わるリズミカルな振動が、早まる鼓動に拍車をけて更に私を追い詰める。

「うっ……」

 あまりの緊張感と恐怖感の合わせ技に、思わず口からうめき声が漏れてしまう。

 怖い。怖すぎるっ。

 ギュッと握りしめた両手に、救いを求めるように更に力を込める。

 女歴二十八年で体験するこの恐怖。

 やっぱりよすんだった、やめておくんだった。

 後悔しても後の祭りで。

 ことここに至ってしまえば、今更逃げ出すことなどできはしない。

 パニック寸前の脳細胞でも、そのくらいは理解できる。

 でも、怖いものは怖いのだ。

『大丈夫。ぜんぜん怖くないから、平気ですよ』

 飯島さんの陽気な笑顔に、コロッとその気になった自分の浅はかさが、恨めしい……。

 この手のことは、はっきり言って得意じゃない。

 否、得手不得手以前に、大っ嫌いだっ!

「高橋さん、目を瞑っていたら、何も見えませんよ?」

 俯いて、ひたすら体を強張らせている私にの耳元に、笑いを含んだ飯島さんの明るい声が落ちてくる。

 そんなこと言っても、体が言うことを聞かないんですってば!