「はい、これ、預かった荷物です。一応、中を確認して下さい」

「ありがとうございます。え、と……」

 ペコリとお礼を言って、見覚えのあるブティックの赤いロゴ入りの白いペーパーバッグを受け取り、中身を確認すれば、見覚えのありすぎるグレーのパンツスーツが一式。間違いなく、私のものだ。

「間違いありません。私の荷物です」

「貴重品とかは、大丈夫ですか?」

「はい。もともと着替えしか入っていませんので」

「それは良かった」

 ニコニコと邪気のない笑顔を向けられて、否が応でも『言うべきことを言わなければ』という緊張感が高まって、ますます鼓動が早まっていく。

 ――ま、まずは、お礼の品を渡す!

 心で自分に叱咤激励。

「わざわざすみませんでした。これつまらないものですが、お茶うけにでもどうぞ!」

 用意していた、おせんべいの詰め合わせ入りの紙袋を、ズイっと捧げ渡す。

「いやぁ、返って気を遣わせてすみません。じゃ、遠慮なく頂きます」

 ありがたいことに、飯島さんは言葉通りに遠慮なく受け取ってくれた。

 ――よしっ。まずは第一段階クリア!

 つ、次が問題だ。言え、言うんだ私っ!

 大きく息を吸い込み、息を止めて。

「飯島さん、じ、実はっ――」