どうも私は、昔から『押し』に弱い。

 相手が男性でなくても。

 そう、例えば相手が『お見合い斡旋あっせんを至上の喜びとする親戚のおばちゃん』でも。

 面と向かって自信満々・笑顔全開で意見を主張されると、まずきっぱりとは断れない。

 相手が善意で動いてくれているのが分かるから。

 悪意が無いと分かってしまうから、無下むげには断れなくなってしまう。

 そして、『考えさせて下さい』的なその場しのぎの逃げ口上こうじょうで、文字通りその場をしのぎ。

 後から、嫌になるくらい後悔するのだ。『どうしてきっぱりと断らなかったのだろう』と。

 それが分かっているのに、毎度毎度どうして? と、自分でも思うけど。

「断れないのよねぇ……」

 突き詰めれば、自分が嫌われるのが怖い――のかもしれないな。

「良い子ちゃんでいたいのよね、私って……」

 そんな自虐的な分析に思わずため息を吐き、腕時計に視線を走らせればもうすぐ約束の午前十一時。

 飯島さんから電話を貰った一時間半後。私は、例の近所のコンビニの駐車場の隅っこに一人、所在もなく佇んでいた。

 土曜日の今時分は結構お店も賑わっていて、駐車場も八割方埋まっている。

 空模様は、飯島さんの言った通り嫌になるくらいの晴天だ。

待ってるのは、言わずもがなの飯島さん。

 やっぱりと言うか案の定と言うか、私は、『俺が車で届けますよ。ついでに、良かったらデートしましょう』と言う飯島さんの主張をきっぱりと断ることが出来なかった。

 どうせ車で行くからと、家まで荷物を届けてくれるとの飯島さんの申し出を、『アパートが大通りから奥まった所にあって、駐車スペースがないので』と苦しい言い訳で丁重にお断りし、待ち合わせ場所をこのコンビニにしたのは我ながら頑張ったと思う。