「いえ、良いんですよ。気にしないで下さい。むしろこうして電話をする口実が出来て、俺的には、ラッキーってなもので」
カラカラと陽気な笑いに引きずられて、思わず笑みがこぼれた。
「そう言って頂けるとありがたいです。でも、どうしましょう。どこに取りに伺えば良い……って、ああ、私、車を会社に置いてきていて、バスで伺うことになるので少し時間がかかりますが……」
答えの代わりに、飯島さんは質問を返してきた。
「高橋さん、今日、予定は空いてますか?」
「え?」
「今日、何処かに出かける予定は、ありますか?」
「あ、ええ。別にないですけど……」
着替えを受け取りに行ったら、後はのんびり家の中でゴロゴロとしていよう。久しぶりに、撮りためたテレビドラマの鑑賞会をしてもいいし、ネットサーフィンで暇をつぶしてもいい。
なんて、今日の予定とも言えない予定をつらつらと考えていたら、「それは、良かった」と、更に陽気な答えが返ってきた。
「はい。別に予定はないので、飯島さんの都合さえよければ今から取りに伺いたいんですが。あの、それで、どこに行けば?」
少しの沈黙の後、意を決したように、飯島さんは口を開いた。
「高橋さん」
「はい?」
「高橋さん。予定がないなら、天気も良いし今からデートしませんか?」
「は、はいっ!?」
飯島さんはさらりと私の質問をスルーして、至極明るい声音で、大きな爆弾発言を投下した。