スマートフォンの画面には、見慣れぬ携帯番号が表示されていた。

『誰だろう?』と首をひねりながら通話ボタンをタップした、その刹那。

「あ、おはようございます!」

 私が『もしもし』と応対するよりも素早く、受話器から飛び出してきた張りのある声に、ドキンと鼓動が跳ね上がった。

「……飯島さん?」

「はい、飯島です。お休みの所に、すみません」

「あ、いいえ。おはようございます。昨日は、お世話になりました」

「いいえ、こちらこそお世話さまでした。それでですね、実は、高橋さんの荷物を預かっていまして」

「はい?」

 私の荷物を、飯島さんが預かっている?

 どうして飯島さんが?

 と言うか、荷物って?

 訳が分からず目を瞬かせていると、飯島さんが説明をしてくれた。

「ほら、昨日のパーティで、高橋さん受付に荷物を預けたでしょう? 受付の女の子が良く知っている娘こで、俺が高橋さんと話していたのを思いだして、忘れ物があるって連絡してきたんですよ」

 そう説明されて、ハッとした。

 そう言えば、ブティックの紙袋に着替えを入れて受付に預けたんだった。それを受け取らずに帰ってきてしまった。

 ああ、なんてドジ。

 いくら急なパーティだったからって、舞い上がるにもほどがある。

 こうして連絡を貰うまでものの見事に、すっかりそのことが頭からすっ飛んでいた事実に、思わず唖然。

「あ、ああ、すみません。こちらこそ、お休みなのに、わざわざお手数をおかけしてしまって……」