「課長、買い物が終わったらタクシーを呼びますから、ご自分のアパートに帰って下さいね」
ひくひくと引きつる笑顔で言ってはみても、課長は返事をくれずに次のお弁当コーナーへと足を進めていく。
もちろん、カゴを引っ張られている私も、もれなく付いて行くしかない。
や、やだ、どうしよう。
やっぱり酔ってるよ、この人。
途方に暮れつつも、このコンビニに訪れた一番の目的、サバの味噌煮缶をカゴに放り込むのは忘れず。
こんもりと詰まったカゴの中身を清算すれば、あとは、アパートに向かうしかない。
でもやっぱり、どう考えても、このまま課長と二人っきりはまずいと思う。
「ありがとうございましたー!」
相変わらず元気な店員さんの声と笑顔に見送られて、コンビニの駐車場の端まで歩いてピタリと足を止める。
コンビニの袋を持って、不思議そうに私の顔を覗き込む課長をきっと見上げ、意を決して今度はびしっ! と言い渡す。
「課長、タクシーを呼びますからね、いいですねっ!」
「呼んでもいいけど、せめて腹ごしらえがすんでからにしてくれないか?」
ボソリというその言葉と、『グゥ~ッ』というひょうきんな音が重なった。