コンビニからアパートまでは、徒歩三分の距離しかない。

 周囲は閑静な住宅街で治安も良いから、買い物をしてこのまま歩いて帰ろう。

 そう思って課長にその旨を告げて、コンビニの駐車場で停まったタクシーを降りた。

「課長、今日は、お疲れ様でした。お先に失礼します」

 ペコリと頭を下げて返事を待たずに逃げるようにクルリと背を向け、さあ『いざコンビニへ!』と、イソイソと店内へ足を向けた。

「いらっしゃいませー!」

 深夜にも関わらず若い男性店員さんの元気な声が笑顔と共に向けられ、笑顔を返して店内に足を踏み入れる。

 週末の為か、私と同じおつまみ目的らしい人影がちらほらと見えた。

 レジ脇に置かれているグレーの買い物カゴを手に取り左ひじにひっかけて、入口側の窓辺にそってブラブラと商品を物色する。

「いらっしゃいませー」

 また店員さんのウエルカムボイスが上がり、同好の士の訪れを告げる。

 さあて、まずはこれよね。

 と、入口際にあるアイス・ボックスを覗きこんだ。

 あ、新発売のアイス・クリームがある!

 目ざとく『新発売!』の赤いシールが張られたアイスクリームのカップに気付き、手を伸ばして一つ取り出しカゴに入れようとしたその時。

 スッと背後から、見覚えのあるダーク・グレーのスーツに包まれた長い腕が伸びてきて、ドキンと鼓動が大きく跳ね上がった。

 その長い指が、私が手に取ったのと同じ商品を掴み『私の持っているカゴの中』にポイっと投げ入れてくる。

 ――え……?