ヘコんだ時は、美味しいものを食べるに限る。
ホテルの高級なディナーには及ぶべくもないけれど、私にとっては、何よりのご馳走だ。
確か冷蔵庫の中に缶ビールと缶酎ハイが数本残っていたはずだから、適当におつまみも買って、一人で酒盛りをしよう。
そして、忘れるんだ。
少しだけ昔の東悟みたいに私をからかう谷田部課長が、どこか楽しそうだったこと。
ドレス選びに迷っているときに、似合うドレスを勧めてくれたこと。
私が飯島さんに告白されてもデートに誘われても、平然としていたこと。
エレベーターでのこと――。
そうだ、忘れよう。
課長に関することはすべて。
今日あったことはみんな夢だったと、綺麗さっぱり忘れる。
そして、月曜には元気に会社に行こう。
『飯島さんに告られちゃったよー!』って教えてあげたら、どんな顔をするだろう、美加ちゃんは。
驚くだろうか?
それとも喜んでくれるだろうか?
きっと少女漫画みたいに目をきらきらーんと輝かせて、喜んでくれるだろう。
そんな想像をしていたら、落ち込んでいた気持ちが少しだけ浮上してきた。
美加ちゃんパワー、恐るべし。
こういう時こそ、友達ってありがたいってしみじみと思う。こうして、その存在だけで、私に元気をくれるのだから。
本当、美加ちゃんの存在は、私の癒しだ。