課長の言っていることは、正論だ。ごく当たり前の一般論。
でも、課長の口から発せられたということだけで、その破壊力たるや東京タワーをなぎ倒すゴジラ並だった。
あまりのショックに、言葉が出ない。
「上司である谷田部さんもこう言ってますし、高橋さん、どうでしょう、一度試しにデートをしてみるっていうのは?」
「え、あの……」
「一度デートしたからって、恋人にしてくれなんて言いませんから。ほら、今日みたいに、友達と遊びに出掛けるような軽いノリでいいですから、ね?」
――そうだよね。
うん、飯島さんとなら、きっと楽しいデートになりそうだよね。
課長も、ああ言ってることだし、デートしてみるのもいいかなぁ。
ダメージを受けている所に押しの一手で押しまくられて、なんだかもう自分で自分の気持ちが分からなくなってきてしまった。
でも、やっぱり、即決はできない。
だから、少しずるい答えを選んでしまった。
「少し、考えさせてもらえませんか?」と。
飯島さんはいつもの陽気な笑い声を上げながら、「じゃあ、いい返事がもらえるのを楽しみに待ってます。いつでも良いから、電話してください。あ、メールじゃなくて声を聴かせてほしいかな」と言って、私にスマートフォンの電話番号を教えてくれた。
礼儀として私の番号も教えて、めでたく電話番号交換が終了。
こうして私の心に大きなダメージを与えたまま、波乱含みのパーティの二次会は、お開きとなった。