グルグルと、出口のない迷路に迷い込んだように、いくら考えても答えがでない。ほとほと困り果てていると、飯島さんは再び、真っ直ぐな瞳で静かに問いかけて来た。
「高橋さんは、俺のことが嫌いですか? 年下は嫌だとか?」
「そ、そんな、もちろん嫌いじゃないですよ。仕事上では尊敬してますし、今日お話しを伺って、とても楽しい方だって分かりましたし、年も別に気にならないし、嫌いだなんて、そんなことないですっ」
って、何を力説してるんだ私は!
そう自分に突っ込みを入れても後の祭りで。私の力説を聞いた飯島さんの表情は、ぱあっと輝いた。
「そうですか! それを聞いて安心しました。嫌いじゃないなら、好きに昇格する望みはありますよね」
「え、あ、あの……」
ああ、果てしなく深い墓穴を掘ってしまった。
自分の優柔不断さと、あまりの要領の悪さに思わず眩暈を覚えたその時、
「ええと、お取込み中、申し訳ない」
背後から聞き覚えのある声が降ってきて、思わずキャッと飛び上がりそうになってしまう。
カクカクカクと、まるで糸の切れた操り人形のようにぎこちない動作で後ろを振り返れば、そこには声の主・谷田部課長が佇む姿があった。