せっかくパーティでは大きな失敗をせずにすんだのに、ここに来て会社のイメージダウンに貢献するところだった。
「相変わらず、心配性だな」
心底、ホッとして胸をなでおろしていると、笑いを含んだ声が降ってきて、ドキッとする。
「人間、本質は変わらないんですよ」
『相変わらず』という言葉に内心ドキドキしながら、でもムッとした表情を作って、口を尖らせる。
「『どうせろくに食べられないだろうから、パーティが終わったら二人で食事でもしてきなさい』だとさ。狸親父にしては気が利いているな」
愉快そうに眼を細めた課長が、社長の言付けを教えてくれた。
さすが社長。太っ腹の上に、先見の明がある。
社長の社長たる所以にしみじみと感じ入っていたら、飯島さんが戻ってきて私の正面に腰を下ろすと、不思議そうにテーブルの上を眺めた。
「あれ? 何か注文しました?」
「あ、いえ、まだ……」
慌ててテーブルの上に閉じたままになっていたメニューを開いて視線を落とした瞬間、不覚にも『うっ』と体が固まってしまった。
――よ、読めないっ。
英語ならなんとかなるけど、これ、少なくとも英語じゃないよね?