「課長、こちらの方は清栄建設の現場監督の飯島さんです。私も、何度か同じ現場でお世話になっているんですよ」
一部の隙もない課長の笑顔にビビりながらも、なんとか飯島さんを紹介する。
「いつもお世話になっております。太陽工業工務課の課長をしております、谷田部と申します」
「ああ、ええと、清栄建設関東エリア中央建築部の飯島です。こちらこそ、特に高橋さんにはお世話になっています」
飯島さんが『特に』と言った後に、課長の笑顔が一瞬ひきつったように見えたのは、きっと気のせい。
「ご迷惑をおかけしていなければ良いのですが」
「いやー、彼女はとても優秀ですよ。鉄骨に関しては私の方が高橋さんに教えてもらっているくらいですから」
「そうですか。お役に立てているのなら幸いです」
おどけたように屈託なく笑う飯島スマイル対、いつもよりも完璧に見える課長スマイルの間に入り、なぜかものすごく居心地が悪いことこの上ない。
――な、なんだろう、この気まずい雰囲気。
初対面のはずなのに、この二人、気が合わないのだろうか。
そうこうしているうちにパーティーは始まり、少し長い開催者挨拶の後『乾杯』の音頭があった。
お酒は自重しようと心に固く決めていたので私はウーロン茶で失礼して、その後、銘々に歓談しながらの立食タイムに突入。
会場内では各々、名刺交換とあいさつ大会が始まった。