♪side:直哉
マッカランとかいう名前のウイスキーで作られたハイボールがコースターの上に置かれた。琥珀色に染まった炭酸水が静かに泡立っている。添えられたレモンの香りは、ほんのうっすらだがしっかりと届いてきた。
別に酒は強い訳でもないのに、どっかの誰かの感じている味わいを自分も感じてみたいとか言った、馬鹿で幼稚な理由で注文してしまった。まるで中学生か高校生の恋愛事情みたいだ。
グラスを口に近づける。翔一の家で一気に飲み込んで一瞬で潰れた時のウイスキーとは明らかに違う香りが優しく漂ってくる。ろくにウイスキーを飲んだことの無い俺でも、「あ、これは高級な酒なんだな」ということが分かるくらい差があった。優しいウイスキーの香りと、ほんの少しのレモンの香りが炭酸水の泡に溶けていた。理由は分からないが、美しいと思った。翔一と散々歩いてきたネオンの街並みも、翔一の過去も、昨日の星空も、全部が全部美しいとは思った。飲み干してしまえばもちろん無くなってしまうけれど、この目の前にある1つのグラスも、それだけで完成し尽くされた物のように美しく感じた。
少しだけこの美しさに見惚れ、そっと口に含んで喉を通してみた。いつもより強めのアルコール感が否めなかったが、それよりも見た目通りの味がした気がする。高いウイスキーの味なんて微塵も分からないし美味しいとも思えなかったけど、なんというか、翔一が「好きだ」と言うのが分かる味がした。
今日、本当の意味でウイスキーを好きになったかもしれない人の横で、俺も本当の意味でウイスキーというものを好きになったのかもしれない。
翔一とバーテンはずっとウイスキーの銘柄とかについて話し込んでいる。二人の話に横槍を入れる気にもならなかったので、グラスを置いて灰皿を手元に引き寄せた。
マッカランとかいう名前のウイスキーで作られたハイボールがコースターの上に置かれた。琥珀色に染まった炭酸水が静かに泡立っている。添えられたレモンの香りは、ほんのうっすらだがしっかりと届いてきた。
別に酒は強い訳でもないのに、どっかの誰かの感じている味わいを自分も感じてみたいとか言った、馬鹿で幼稚な理由で注文してしまった。まるで中学生か高校生の恋愛事情みたいだ。
グラスを口に近づける。翔一の家で一気に飲み込んで一瞬で潰れた時のウイスキーとは明らかに違う香りが優しく漂ってくる。ろくにウイスキーを飲んだことの無い俺でも、「あ、これは高級な酒なんだな」ということが分かるくらい差があった。優しいウイスキーの香りと、ほんの少しのレモンの香りが炭酸水の泡に溶けていた。理由は分からないが、美しいと思った。翔一と散々歩いてきたネオンの街並みも、翔一の過去も、昨日の星空も、全部が全部美しいとは思った。飲み干してしまえばもちろん無くなってしまうけれど、この目の前にある1つのグラスも、それだけで完成し尽くされた物のように美しく感じた。
少しだけこの美しさに見惚れ、そっと口に含んで喉を通してみた。いつもより強めのアルコール感が否めなかったが、それよりも見た目通りの味がした気がする。高いウイスキーの味なんて微塵も分からないし美味しいとも思えなかったけど、なんというか、翔一が「好きだ」と言うのが分かる味がした。
今日、本当の意味でウイスキーを好きになったかもしれない人の横で、俺も本当の意味でウイスキーというものを好きになったのかもしれない。
翔一とバーテンはずっとウイスキーの銘柄とかについて話し込んでいる。二人の話に横槍を入れる気にもならなかったので、グラスを置いて灰皿を手元に引き寄せた。