♪side:翔一
上野駅一番ホームに降りてすぐの階段を上り、不忍改札を抜けて不忍口から駅を出る。冷たい空気が肌を突き刺してきた。
横断歩道の向こう側すぐにある上野の森さくらテラスは活気で溢れていて、以前建っていた上野松竹デパートとは比べ物にならないほどオシャレな雰囲気を放っていた。でも、俺は個人的に上野松竹デパートのあの哀愁漂う雰囲気が嫌いではなかった。ボロボロになった外壁から鉄筋が見えていたり、ずっと雨風に晒され続ける宝くじののぼり旗が汚れていたりとか、そういうノスタルジックな雰囲気が好きだった。もちろん今のさくらテラスもたまにタリーズコーヒーに寄ったり少しいい昼食を食べに来たりするくらいには好きではあるけど。
上野駅から少し歩いたところにある「森の茶屋」という定食屋に向かう。高架下にひっそりと佇むんでいるいかにも大衆向けと言った感じの定食屋だ。赤茶色の外観と黒地に白文字で書かれたの看板が見えてきて、少し懐かしさを感じた。
「すげぇ店だな」
「なんか、いかにもって感じだろ」
「さっきのさくらテラスでも良かったんじゃねぇの?」
「全国チェーンばっかの所よりこういうさ、ここに来ないと食べれないみたいな特別感がいいんだよ」
「出た、翔一のいかにもグルメ」
「いかにもグルメってなんだよ」
「地元の人しか知らねぇ様なさ、この前の神田の喫茶店みたいな感じの店を紹介してくるその言動」
「ろくでもねぇあだ名がついたもんだ」
「ここのオススメとかあるのか?」
「オススメか……やっぱ生姜焼きささみフライ定食かな。結構濃いめの味付けだけどそれが美味いのなんの」
「メニューまでいかにも定食屋ですよって感じだな」
「それがいいんだって。昼飯時に地元の人達が集まる定食屋ってのは美味い証拠なんだよ」
「確かにな」
定食屋の魅力を言うだけ言って、「お食事処」と書いてある暖簾をくぐった。最近来ていなかった店だったが、外観も内装もメニューもほとんど変わっていない様だった。手書きのメニューが壁一面に貼られていたり、時計の隅の方にご飯の大盛りや特盛の表記があったりする様な、本当に定食屋のイメージそのまんまの店だ。
俺はよく食べていた生姜焼きささみフライ定食を今日も変わらず注文し、直哉は豚キムチ定食を注文した。
お昼時から少し遅れた店内は落ち着いており、地元の人達が数人席に座っているだけだった。フライの揚がる音や熱い油の匂い、豚キムチが炒められるピリ辛な匂いがじんわりと店内に馴染み始めた。
上野駅一番ホームに降りてすぐの階段を上り、不忍改札を抜けて不忍口から駅を出る。冷たい空気が肌を突き刺してきた。
横断歩道の向こう側すぐにある上野の森さくらテラスは活気で溢れていて、以前建っていた上野松竹デパートとは比べ物にならないほどオシャレな雰囲気を放っていた。でも、俺は個人的に上野松竹デパートのあの哀愁漂う雰囲気が嫌いではなかった。ボロボロになった外壁から鉄筋が見えていたり、ずっと雨風に晒され続ける宝くじののぼり旗が汚れていたりとか、そういうノスタルジックな雰囲気が好きだった。もちろん今のさくらテラスもたまにタリーズコーヒーに寄ったり少しいい昼食を食べに来たりするくらいには好きではあるけど。
上野駅から少し歩いたところにある「森の茶屋」という定食屋に向かう。高架下にひっそりと佇むんでいるいかにも大衆向けと言った感じの定食屋だ。赤茶色の外観と黒地に白文字で書かれたの看板が見えてきて、少し懐かしさを感じた。
「すげぇ店だな」
「なんか、いかにもって感じだろ」
「さっきのさくらテラスでも良かったんじゃねぇの?」
「全国チェーンばっかの所よりこういうさ、ここに来ないと食べれないみたいな特別感がいいんだよ」
「出た、翔一のいかにもグルメ」
「いかにもグルメってなんだよ」
「地元の人しか知らねぇ様なさ、この前の神田の喫茶店みたいな感じの店を紹介してくるその言動」
「ろくでもねぇあだ名がついたもんだ」
「ここのオススメとかあるのか?」
「オススメか……やっぱ生姜焼きささみフライ定食かな。結構濃いめの味付けだけどそれが美味いのなんの」
「メニューまでいかにも定食屋ですよって感じだな」
「それがいいんだって。昼飯時に地元の人達が集まる定食屋ってのは美味い証拠なんだよ」
「確かにな」
定食屋の魅力を言うだけ言って、「お食事処」と書いてある暖簾をくぐった。最近来ていなかった店だったが、外観も内装もメニューもほとんど変わっていない様だった。手書きのメニューが壁一面に貼られていたり、時計の隅の方にご飯の大盛りや特盛の表記があったりする様な、本当に定食屋のイメージそのまんまの店だ。
俺はよく食べていた生姜焼きささみフライ定食を今日も変わらず注文し、直哉は豚キムチ定食を注文した。
お昼時から少し遅れた店内は落ち着いており、地元の人達が数人席に座っているだけだった。フライの揚がる音や熱い油の匂い、豚キムチが炒められるピリ辛な匂いがじんわりと店内に馴染み始めた。