♪side:航大
長野にも雪が降り始めた。段々と年末に近づくにつれ、街はイルミネーションやクリスマスツリー、クリスマスソングで彩られていく。いつもは少し時代遅れのJ-POPを安っぽい音で流しているスピーカーからも、この時期だけは安っぽいクリスマスソングが流れている。どこかで聴いたことのあるメロディは、ジョン・レノンの「Happy Xmas」だった。ポール・マッカートニーの「Wonderful Christmas Time」はいつになっても聴こえてこない。そのうち曲が変わり、今度はワムの「Last Christmas」が流れ始めた。
視覚的にも聴覚的にも賑やかになった駅前の通りを一人で歩いていた。大学が冬季休講に入ってから、翔一は地元の新宿に帰っている。周りは仲の良さそうなカップルで溢れかえっていて、自分だけが一人でいるかのような錯覚に陥る。実際はスーツ姿のサラリーマンも携帯電話で話しながら忙しそうに一人で歩いていたし、ケーキ屋かなんかのバイトがサンタの格好をしてケーキの配達をしていたりした。
夏が終わって、秋も気づけば終わっていて、あっという間にこんな時期になった。もちろん温くなって炭酸の抜けたジンジャーエールの味を忘れた日は無い。あのジンジャーエールの味と翔一の唇の感触は多分一生忘れられないんだろう。けど、もしかしたら、いっそ忘れてしまった方がいいんじゃないか、なんて思ってしまう時もある。俺は男で、翔一も男で。そういった関係が認められ始めているとは言っても、まだまだ世間からは白い目で見られる事の方が多い気がしている。俺のわがままで翔一も白い目で見られる必要は無いと思う。それに、翔一にはちゃんと女の人と幸せになってほしいって思っていたりもする。
翔一の事を考えれば考えるほどに、翔一とは離れた方がいいんじゃないかと思う気持ちが強くなる。第一、結局翔一からちゃんとした答えは帰ってこなくて、俺たちの関係は宙ぶらりんのままだった。俺もはっきりと答えを出せなかったし、引きずらなくていいものを引きずってここまで来てしまった。ハングマンズノットに吊り下げられたまま放置された気持ちにケリをつけるのは、次に翔一に会った時しかないと思っている。七海との最後の夜を覚悟した時と同じように、また俺は一つ覚悟を決めた。
長野にも雪が降り始めた。段々と年末に近づくにつれ、街はイルミネーションやクリスマスツリー、クリスマスソングで彩られていく。いつもは少し時代遅れのJ-POPを安っぽい音で流しているスピーカーからも、この時期だけは安っぽいクリスマスソングが流れている。どこかで聴いたことのあるメロディは、ジョン・レノンの「Happy Xmas」だった。ポール・マッカートニーの「Wonderful Christmas Time」はいつになっても聴こえてこない。そのうち曲が変わり、今度はワムの「Last Christmas」が流れ始めた。
視覚的にも聴覚的にも賑やかになった駅前の通りを一人で歩いていた。大学が冬季休講に入ってから、翔一は地元の新宿に帰っている。周りは仲の良さそうなカップルで溢れかえっていて、自分だけが一人でいるかのような錯覚に陥る。実際はスーツ姿のサラリーマンも携帯電話で話しながら忙しそうに一人で歩いていたし、ケーキ屋かなんかのバイトがサンタの格好をしてケーキの配達をしていたりした。
夏が終わって、秋も気づけば終わっていて、あっという間にこんな時期になった。もちろん温くなって炭酸の抜けたジンジャーエールの味を忘れた日は無い。あのジンジャーエールの味と翔一の唇の感触は多分一生忘れられないんだろう。けど、もしかしたら、いっそ忘れてしまった方がいいんじゃないか、なんて思ってしまう時もある。俺は男で、翔一も男で。そういった関係が認められ始めているとは言っても、まだまだ世間からは白い目で見られる事の方が多い気がしている。俺のわがままで翔一も白い目で見られる必要は無いと思う。それに、翔一にはちゃんと女の人と幸せになってほしいって思っていたりもする。
翔一の事を考えれば考えるほどに、翔一とは離れた方がいいんじゃないかと思う気持ちが強くなる。第一、結局翔一からちゃんとした答えは帰ってこなくて、俺たちの関係は宙ぶらりんのままだった。俺もはっきりと答えを出せなかったし、引きずらなくていいものを引きずってここまで来てしまった。ハングマンズノットに吊り下げられたまま放置された気持ちにケリをつけるのは、次に翔一に会った時しかないと思っている。七海との最後の夜を覚悟した時と同じように、また俺は一つ覚悟を決めた。