♪side:翔一
アパートのすぐ近くまで来たところで航大と会った。軽く引くくらいの量の荷物を持って汗だくで歩いている友達の背中が、なんだか哀れに見えて仕方が無かった。いつも通りくだらない会話をしながら部屋に戻ってから、俺は荷物を下ろして座り込んだ。カバンから買った雑誌を取り出し、特にしっかりと読むわけでもなくペラペラめくってみる。
アビイ・ロードという特集のページが目に留まった。見開き一ページ全体にあの有名な写真が印刷されていた。一九六九年に発売されたビートルズのオリジナルアルバムらしいが、いかんせんこの横断歩道の写真が有名すぎて独り歩きしているイメージがある。彼らの事は全く詳しくないのに、写真の美しさだけで惹き込まれてしまう。
「なぁ、翔一ってビートルズ好きだったっけ?」
「いや別に好きって訳では無いんだけど、なんか気になってさ」
「なんでまたビートルズ?」
「航大はこの写真知ってるか?」
「あぁ、これ有名だよな。アビイ・ロードだっけ。一九六九年アップルミュージックから出たやつ」
「あれ?もしかして詳しい?」
「ビートルズは結構好きな方だぞ」
「意外すぎんだけど」
「意外か?言ってなかったっけ」
「聞いてない」
「言ってなかったか。いいぞ、ビートルズ」
「ちょうど俺も航大におすすめしたい曲あったんだよな」
「翔一が俺に曲?珍しいな」
「まぁでも、それはいいんだ。航大はビートルズの中で1番好きな曲ってなんだ?」
「一番?なんだろうなぁ。好きなのは多いけど……強いていえば『ゴールデンスランバー』かな」
「ゴールデンスランバー。どういう意味だ?」
「直訳だと黄金の微睡みって意味だけど」
「は?微睡み?」
「うたた寝、だとか浅い眠り、みたいな感じの意味らしい」
「よくわかんねぇな」
「ビートルズの子守唄ってな」
「なんだよそれ」
「まぁ聴いてみろよ。俺が好きになった意味を少しでもわかってくれると嬉しいけど」
「分かったよ。ありがとうな」
「で、翔一が俺におすすめ曲ってのは?」
「あぁ、それはまた今度教えるよ。とりあえずはゴールデンスランバー、聴いてみるよ」
会話が途切れ、航大は台所で忙しそうに買ってきたものを片付け続けている。冷凍食品だとかパスタの乾麺だとか、そんなものばかりがビニール袋から取り出されてはいつもの場所にしまわれる。俺は財布から千円札を二枚取り出し、テーブルに置いた。そして、伏せておいた雑誌をまた手に取り、めくっては眺めた。
最後のページが終わり、閉じた雑誌をカバンに放り込んで少し横になった。
アパートのすぐ近くまで来たところで航大と会った。軽く引くくらいの量の荷物を持って汗だくで歩いている友達の背中が、なんだか哀れに見えて仕方が無かった。いつも通りくだらない会話をしながら部屋に戻ってから、俺は荷物を下ろして座り込んだ。カバンから買った雑誌を取り出し、特にしっかりと読むわけでもなくペラペラめくってみる。
アビイ・ロードという特集のページが目に留まった。見開き一ページ全体にあの有名な写真が印刷されていた。一九六九年に発売されたビートルズのオリジナルアルバムらしいが、いかんせんこの横断歩道の写真が有名すぎて独り歩きしているイメージがある。彼らの事は全く詳しくないのに、写真の美しさだけで惹き込まれてしまう。
「なぁ、翔一ってビートルズ好きだったっけ?」
「いや別に好きって訳では無いんだけど、なんか気になってさ」
「なんでまたビートルズ?」
「航大はこの写真知ってるか?」
「あぁ、これ有名だよな。アビイ・ロードだっけ。一九六九年アップルミュージックから出たやつ」
「あれ?もしかして詳しい?」
「ビートルズは結構好きな方だぞ」
「意外すぎんだけど」
「意外か?言ってなかったっけ」
「聞いてない」
「言ってなかったか。いいぞ、ビートルズ」
「ちょうど俺も航大におすすめしたい曲あったんだよな」
「翔一が俺に曲?珍しいな」
「まぁでも、それはいいんだ。航大はビートルズの中で1番好きな曲ってなんだ?」
「一番?なんだろうなぁ。好きなのは多いけど……強いていえば『ゴールデンスランバー』かな」
「ゴールデンスランバー。どういう意味だ?」
「直訳だと黄金の微睡みって意味だけど」
「は?微睡み?」
「うたた寝、だとか浅い眠り、みたいな感じの意味らしい」
「よくわかんねぇな」
「ビートルズの子守唄ってな」
「なんだよそれ」
「まぁ聴いてみろよ。俺が好きになった意味を少しでもわかってくれると嬉しいけど」
「分かったよ。ありがとうな」
「で、翔一が俺におすすめ曲ってのは?」
「あぁ、それはまた今度教えるよ。とりあえずはゴールデンスランバー、聴いてみるよ」
会話が途切れ、航大は台所で忙しそうに買ってきたものを片付け続けている。冷凍食品だとかパスタの乾麺だとか、そんなものばかりがビニール袋から取り出されてはいつもの場所にしまわれる。俺は財布から千円札を二枚取り出し、テーブルに置いた。そして、伏せておいた雑誌をまた手に取り、めくっては眺めた。
最後のページが終わり、閉じた雑誌をカバンに放り込んで少し横になった。