♪side:翔一
ポータブルCDプレイヤーに繋いだイヤホンで音楽を聴きながら大講堂に向かう。人気だからという理由で選択した講義だったが、なぜ人気なのか分からないほどつまらない。ルベーグ積分なんて難しいだけで本当につまらない。この講義が人気の理由なんて、どうせ出席を取られないからだとか、テストが持ち込み可の科目だからとかそんな様なものなのだろう。汗を袖口で拭って席につく。ペンも参考書も出さずにイヤホンをつけたまま机に突っ伏して眠ろうとする。
もうずっとこのCDをずっと聴いている。高校生くらいの頃から好きなアーティストだ。片耳イヤホンからCDの四曲目が流れ始め、もう片方の耳からは教授の抑揚のない声が聞こえてくる。教授の声を無視して、好きな曲の歌詞を頭に浮かべる。このCDの四曲目は本当にずっと大好きだ。
『証』
無機質な精算機の声
それで気づかないと思ってるの?
知らないふりして黙ってるの
最後まで最低な人 でも
最後だけいい人なのは何故
笑わないあなたを笑わせた人
どこの誰? 最後に教えてよ
外した指輪の跡が消えてない
薬指 どうして隠してくれない
二番目でいいと言ったはずなのに
私は遊び 悲しいけどそれでいい
晒した肌 見つめた鏡の中
涙流す 私がそこにいた
私の居場所 もうここだけなの
さようならなんて言わせないで
心と体の奥の奥まで
注ぎ込んだ愛の証 忘れたの?
いつまで繋ぎ止めとくつもり?
勝手に広がるこの距離と傷口
締めくくり終わりたい物語
途切れたあの日からのこの轍
声と軋むベッドの音が響く
愛 無い行為に愛想尽かしたの
ズレたキャミソールの白い肩紐
もうあなたの為に戻さないの
事が済んだあとに囁く言葉
’’ねぇあのさ’’ から始まる別れ話
とっくにその心はここに無い
指の隙間からこぼれ落ちた愛
最低なあなたを愛した罰
ダブルベッドが広く虚しいの
誤魔化すならもっと上手くして
私を抱くのだけは上手いくせに
ねぇ 私もひとりの女なの
これが最後の恋って決めてたの
それなのにもう何回目の「最後」
愛に溺れ 抜け出せないの
心と体の奥の奥まで
注ぎ込んだ愛の証 忘れたの?
いつまで繋ぎ止めとくつもり?
勝手に広がるこの距離と傷口
締めくくり終わりたい物語
途切れたあの日からのこの轍
抱いた温もりは忘れたはずの
蜜を垂らしながら開く夜の花
拒む気持ちに反して濡れる
揺れる気持ちと暮れる悲しみ
触れるその指ベッドが蒸れる
区別無く告げてきたのねその言葉
最後のフレグランス
沁みたタオル さよなら伝えられず
誰にも聞こえないギリギリまで音量を上げる。メロディと歌詞がこれほどマッチした曲は多分無いと思う。この世の中に出ている曲を全て聴いたわけではないからそんな大きな事を言う資格は無いけど、俺の人生の中でこの曲が一番のお気に入りだ。
眠気はあるはずなのに眠れず、講義中の九十分間ずっと『証』を聴いていた。今日はもう帰って、この曲を航大に聴かせてやろうと思う。
ポータブルCDプレイヤーに繋いだイヤホンで音楽を聴きながら大講堂に向かう。人気だからという理由で選択した講義だったが、なぜ人気なのか分からないほどつまらない。ルベーグ積分なんて難しいだけで本当につまらない。この講義が人気の理由なんて、どうせ出席を取られないからだとか、テストが持ち込み可の科目だからとかそんな様なものなのだろう。汗を袖口で拭って席につく。ペンも参考書も出さずにイヤホンをつけたまま机に突っ伏して眠ろうとする。
もうずっとこのCDをずっと聴いている。高校生くらいの頃から好きなアーティストだ。片耳イヤホンからCDの四曲目が流れ始め、もう片方の耳からは教授の抑揚のない声が聞こえてくる。教授の声を無視して、好きな曲の歌詞を頭に浮かべる。このCDの四曲目は本当にずっと大好きだ。
『証』
無機質な精算機の声
それで気づかないと思ってるの?
知らないふりして黙ってるの
最後まで最低な人 でも
最後だけいい人なのは何故
笑わないあなたを笑わせた人
どこの誰? 最後に教えてよ
外した指輪の跡が消えてない
薬指 どうして隠してくれない
二番目でいいと言ったはずなのに
私は遊び 悲しいけどそれでいい
晒した肌 見つめた鏡の中
涙流す 私がそこにいた
私の居場所 もうここだけなの
さようならなんて言わせないで
心と体の奥の奥まで
注ぎ込んだ愛の証 忘れたの?
いつまで繋ぎ止めとくつもり?
勝手に広がるこの距離と傷口
締めくくり終わりたい物語
途切れたあの日からのこの轍
声と軋むベッドの音が響く
愛 無い行為に愛想尽かしたの
ズレたキャミソールの白い肩紐
もうあなたの為に戻さないの
事が済んだあとに囁く言葉
’’ねぇあのさ’’ から始まる別れ話
とっくにその心はここに無い
指の隙間からこぼれ落ちた愛
最低なあなたを愛した罰
ダブルベッドが広く虚しいの
誤魔化すならもっと上手くして
私を抱くのだけは上手いくせに
ねぇ 私もひとりの女なの
これが最後の恋って決めてたの
それなのにもう何回目の「最後」
愛に溺れ 抜け出せないの
心と体の奥の奥まで
注ぎ込んだ愛の証 忘れたの?
いつまで繋ぎ止めとくつもり?
勝手に広がるこの距離と傷口
締めくくり終わりたい物語
途切れたあの日からのこの轍
抱いた温もりは忘れたはずの
蜜を垂らしながら開く夜の花
拒む気持ちに反して濡れる
揺れる気持ちと暮れる悲しみ
触れるその指ベッドが蒸れる
区別無く告げてきたのねその言葉
最後のフレグランス
沁みたタオル さよなら伝えられず
誰にも聞こえないギリギリまで音量を上げる。メロディと歌詞がこれほどマッチした曲は多分無いと思う。この世の中に出ている曲を全て聴いたわけではないからそんな大きな事を言う資格は無いけど、俺の人生の中でこの曲が一番のお気に入りだ。
眠気はあるはずなのに眠れず、講義中の九十分間ずっと『証』を聴いていた。今日はもう帰って、この曲を航大に聴かせてやろうと思う。