♪side:直哉
扉が開いた音でうっすらと目が覚めた。明るかった視界が突然暗くなった。照明を消した翔一がそっと横を通る。寝ているフリはバレていない様だった。本棚の上から何かを取って翔一は部屋を出る。扉が閉まって一気に部屋が暗くなる。目を開く。消えた照明の残像がまだ少し視界にチラついている。あぁ、飛蚊症ってこういう感じなのかなと酔った頭でどうでもいい事を考える。
隣の部屋からカキン、と音がする。ドラマや映画でよく聞く音だった。電子タバコの自分には縁がないが、乾いた小気味のいい音だと思う。
「……」
なにか呟いたような翔一の言葉は聞き取れなかった。そのまま、また眠りに落ちた。
夢の中、目の前に広がる夜景。スカイツリーの展望回廊から見下ろした様な、ずっと高い場所から見下ろす東京。仕事や旅行でしか行ったことのない白く光る街。眠らない街。大都会に何万人といる量産型サラリーマンAや作業員Bみたいな生き方がなんとなく嫌で、生まれてからずっとこの地で生きてきた。都会で働いて好きなように生きるのは憧れだった。でも、きっと自分には無理だと思って地元で就職をした。都会に出ていく仲間を見送りながら。こんな夢を見ながら眠らない街の片隅で、気持ちよく眠れるとは思っていなかった。
暑さで目が覚めた。二日酔いのせいか、少し頭が痛い。カーテンの隙間から朝日が差し込んできていた。布団が擦れる音以外にはなんの音もしない部屋に、やっぱり1人だ。このベッドの上にいること以外はいつもの朝だった。
流されてたどり着いたのかも知れないこの場所。二日酔いと色々ありすぎた昨日の疲れが邪魔だ。温かさと冷たさが入り交じったようなベッドの上で身体を起こして、背中をマットレスから引き剥がした。部屋はまだ暗かったが、カーテンの隙間からうっすらと光が差し込んできていた。部屋のドアの下の隙間からも無機質な灯りが漏れてきていた。翔一も、もう起きているみたいだ。
回らない頭がやっと朝を実感する。
扉が開いた音でうっすらと目が覚めた。明るかった視界が突然暗くなった。照明を消した翔一がそっと横を通る。寝ているフリはバレていない様だった。本棚の上から何かを取って翔一は部屋を出る。扉が閉まって一気に部屋が暗くなる。目を開く。消えた照明の残像がまだ少し視界にチラついている。あぁ、飛蚊症ってこういう感じなのかなと酔った頭でどうでもいい事を考える。
隣の部屋からカキン、と音がする。ドラマや映画でよく聞く音だった。電子タバコの自分には縁がないが、乾いた小気味のいい音だと思う。
「……」
なにか呟いたような翔一の言葉は聞き取れなかった。そのまま、また眠りに落ちた。
夢の中、目の前に広がる夜景。スカイツリーの展望回廊から見下ろした様な、ずっと高い場所から見下ろす東京。仕事や旅行でしか行ったことのない白く光る街。眠らない街。大都会に何万人といる量産型サラリーマンAや作業員Bみたいな生き方がなんとなく嫌で、生まれてからずっとこの地で生きてきた。都会で働いて好きなように生きるのは憧れだった。でも、きっと自分には無理だと思って地元で就職をした。都会に出ていく仲間を見送りながら。こんな夢を見ながら眠らない街の片隅で、気持ちよく眠れるとは思っていなかった。
暑さで目が覚めた。二日酔いのせいか、少し頭が痛い。カーテンの隙間から朝日が差し込んできていた。布団が擦れる音以外にはなんの音もしない部屋に、やっぱり1人だ。このベッドの上にいること以外はいつもの朝だった。
流されてたどり着いたのかも知れないこの場所。二日酔いと色々ありすぎた昨日の疲れが邪魔だ。温かさと冷たさが入り交じったようなベッドの上で身体を起こして、背中をマットレスから引き剥がした。部屋はまだ暗かったが、カーテンの隙間からうっすらと光が差し込んできていた。部屋のドアの下の隙間からも無機質な灯りが漏れてきていた。翔一も、もう起きているみたいだ。
回らない頭がやっと朝を実感する。