♪side：直哉
飲んだこともないウイスキー。アクワイヤード･テイストもなにもしてない状況でいきなり注がれてしまった。グラスを傾けて唇に触れさせてみる。氷の冷たさと強いアルコールが唇と鼻を刺激する。一瞬で酔いそうになる。
「なぁ、普段飲まねぇ酒ってなんでこんな不味そうに感じるんだろうな」
「俺も最初はそうだったよ。誰がこんな酒くせぇもん飲むかよって思ってた」
「それがどうして飲むようになったんだか」
「そうさなぁ、なんでだろうなぁ。今となっちゃ分かんないけど、多分カッコつけたかったんだろうな」
「なんだそれ、若気の至り？」
「かもしれねぇな」
「男ってのはやっぱカッコつけたくなるもんだよな、その気持ち分かるよ。少しだけだけど」
「少しだけかよ」
「カッコつけのためにこんなキツい酒飲む気持ちは分からねぇからな」
「まぁそうかもな。あの頃の俺はさ、カッコつける為ならなんでもやってたみたいな人間だったから」
「カッコつけなくても充分かっこいいと思うぞ」
「はっ、いきなりなんだよ」
「本音だけど、なんだよ。いつも思ってるよ。今までも思ってたよ。お前の前でカッコつけれるんだったらこんなもん全部飲んでやるよ」
「ちょっと待て、それは一気に飲むようなもんじゃ」
残っていたウイスキーを一気に飲み干した。口の中と喉が焼けそうになる。グラスをテーブルに置く視界がグラついた。眩暈がしたような感覚が全身を貫く。そのまま横たわる。身体が熱くなってくる。
「馬鹿か、止めたのによ」
「俺だってカッコつけたい時あんだよ」
「カッコつけようとして酒一気飲みして潰れるのはダサいぞ」
「分かってるよ。でも、なんか今ならいけんじゃねぇかって思っちまってさぁ」
「とりあえずそこで横になってろ。水持ってきてやるから」
「すまん、ちょっと無茶しちまった」
俺に声をかけながらキッチンへ行く。呆れたような声が少しづつ遠くなる。
「はいよ、水」
「ありがとう」
グラスを受け取った。水の冷たさがグラス越しに伝わってくる。すぐに水を飲み干した。東京の水道水が心無しか美味しく感じた。
「ただの水道水でも美味そうに飲むんだな」
「いや、まぁさっきのウイスキーよりは美味いわな」
「それ言うか？」
「別に事実だし、言うだけタダだろ」
「慣れてない奴からしたらウイスキーより水の方が美味いのか」
「みたいだな」
テーブルにグラスを置いて横になる。焦点の合わない視界の中でミックスナッツをつまみながらグラスを傾ける翔一を見つめ続ける。
「大丈夫か？もしあれなら寝るか？」
「どうしようかな」
「どっちでもいいぞ。体調と相談して決めてくれ。けどそこで寝るなよ。風邪ひくし、起きた時身体痛くなるからな」
「あぁ、うん。じゃ寝るわ」
「あいよ、そんならそこの部屋にベッドあるから先に寝てろよ」
「ベッド？なんで？」
「引っ越しの時に捨てるの大変でな。どうせ運搬料金も変わらないし、ついでに持ってきたんだけど結局使わずじまいさ」
「宝の持ち腐れかよ」
「今ちょうど役に立ちそうだからいいじゃねぇか。うだうだ言ってないで早く寝てろよ」
「わかったわかった、じゃベッド借りるぞ」
「あぁ、おやすみ」
「おやすみ」
おぼつかない足取りで扉まで歩く。ドアノブを掴み損ねて、自分が相当酔っていることに気づく。今度はしっかりとドアノブを掴んで、ドアを開ける。ひんやりとした空気が流れてきて、全身を撫でる。ドアの横にあるスイッチを押して、照明をつけた。大きめのベッドが置いてあった。そこに倒れ込んだ。柔らかいマットレスに身体を預け、羽毛布団をかける。そのまま眠りに落ちる。
飲んだこともないウイスキー。アクワイヤード･テイストもなにもしてない状況でいきなり注がれてしまった。グラスを傾けて唇に触れさせてみる。氷の冷たさと強いアルコールが唇と鼻を刺激する。一瞬で酔いそうになる。
「なぁ、普段飲まねぇ酒ってなんでこんな不味そうに感じるんだろうな」
「俺も最初はそうだったよ。誰がこんな酒くせぇもん飲むかよって思ってた」
「それがどうして飲むようになったんだか」
「そうさなぁ、なんでだろうなぁ。今となっちゃ分かんないけど、多分カッコつけたかったんだろうな」
「なんだそれ、若気の至り？」
「かもしれねぇな」
「男ってのはやっぱカッコつけたくなるもんだよな、その気持ち分かるよ。少しだけだけど」
「少しだけかよ」
「カッコつけのためにこんなキツい酒飲む気持ちは分からねぇからな」
「まぁそうかもな。あの頃の俺はさ、カッコつける為ならなんでもやってたみたいな人間だったから」
「カッコつけなくても充分かっこいいと思うぞ」
「はっ、いきなりなんだよ」
「本音だけど、なんだよ。いつも思ってるよ。今までも思ってたよ。お前の前でカッコつけれるんだったらこんなもん全部飲んでやるよ」
「ちょっと待て、それは一気に飲むようなもんじゃ」
残っていたウイスキーを一気に飲み干した。口の中と喉が焼けそうになる。グラスをテーブルに置く視界がグラついた。眩暈がしたような感覚が全身を貫く。そのまま横たわる。身体が熱くなってくる。
「馬鹿か、止めたのによ」
「俺だってカッコつけたい時あんだよ」
「カッコつけようとして酒一気飲みして潰れるのはダサいぞ」
「分かってるよ。でも、なんか今ならいけんじゃねぇかって思っちまってさぁ」
「とりあえずそこで横になってろ。水持ってきてやるから」
「すまん、ちょっと無茶しちまった」
俺に声をかけながらキッチンへ行く。呆れたような声が少しづつ遠くなる。
「はいよ、水」
「ありがとう」
グラスを受け取った。水の冷たさがグラス越しに伝わってくる。すぐに水を飲み干した。東京の水道水が心無しか美味しく感じた。
「ただの水道水でも美味そうに飲むんだな」
「いや、まぁさっきのウイスキーよりは美味いわな」
「それ言うか？」
「別に事実だし、言うだけタダだろ」
「慣れてない奴からしたらウイスキーより水の方が美味いのか」
「みたいだな」
テーブルにグラスを置いて横になる。焦点の合わない視界の中でミックスナッツをつまみながらグラスを傾ける翔一を見つめ続ける。
「大丈夫か？もしあれなら寝るか？」
「どうしようかな」
「どっちでもいいぞ。体調と相談して決めてくれ。けどそこで寝るなよ。風邪ひくし、起きた時身体痛くなるからな」
「あぁ、うん。じゃ寝るわ」
「あいよ、そんならそこの部屋にベッドあるから先に寝てろよ」
「ベッド？なんで？」
「引っ越しの時に捨てるの大変でな。どうせ運搬料金も変わらないし、ついでに持ってきたんだけど結局使わずじまいさ」
「宝の持ち腐れかよ」
「今ちょうど役に立ちそうだからいいじゃねぇか。うだうだ言ってないで早く寝てろよ」
「わかったわかった、じゃベッド借りるぞ」
「あぁ、おやすみ」
「おやすみ」
おぼつかない足取りで扉まで歩く。ドアノブを掴み損ねて、自分が相当酔っていることに気づく。今度はしっかりとドアノブを掴んで、ドアを開ける。ひんやりとした空気が流れてきて、全身を撫でる。ドアの横にあるスイッチを押して、照明をつけた。大きめのベッドが置いてあった。そこに倒れ込んだ。柔らかいマットレスに身体を預け、羽毛布団をかける。そのまま眠りに落ちる。
